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『「感想文」から「文学批評」へ』を読んだ

文学批評の歴史を踏まえて文学批評の各分野を説明してくれる入門書。

小鳥遊書房 本が本を産む|書籍一覧|「感想文」から「文学批評」へ

登場人物にまつわる要素で13という数字が出てきたら何かを裏切ることを示しているといった考察や、作者の人生やインタビューなどから作品のテーマを解読している記事や本が好きで、批評にはどのような歴史やどのようなジャンルがあるのか体系的に知りたくて読んだ。歴史を踏まえて文学批評の各分野の生い立ちを見ていると、健全な批判を繰り返して文学批評という分野が成長しているように見えた。

作品を理解するためには、作家の個性(性格・仕事・生い立ち・人間関係など)を理解する必要があるという「作家論」が十九世紀のヨーロッパで多くの人に受け入れられ広がった。しかし、作家というものが重視されだしたのは、16世紀から始まるヨーロッパの近代社会からであって、作家と作品を切り離して作品だけに着目して分析すべきだという「ニュークリティシズム」が生まれた。その「ニュークリティシズム」もそれぞれの作品の分析で留まってしまい、普遍性がないという批判を受け、全ての作品には共通する構造があるという「構造主義」が生まれた。

自分がソフトウェア開発をやっていたり、数学が好きだったりするので、「構造主義」に対して好印象を持つのだが、この「構造主義」も納得感の高い批判が出てくる。構造の取り方が主観的であるという批判や作品の書かれた社会や歴史的な背景を無視しているという批判である。作品の書かれた社会や歴史的な背景を踏まえて作品の声を分析しようというのが「イデオロギー批評」である。この「イデオロギー批評」も作者の作者の個人的な体験に過ぎず、ある集団のアイデンティを過度に一般化しようとしているのではないかという批判がある。このような批判を受けて「読者論」が出てきたり、さらに作者・作品・読者のいずれにも重点を置かない「メディア論」が出てきて、「読者論」や「メディア論」についてもわかりやすく解説されている。

本書を読んで、自分が批評のジャンルの中で「構造主義」や「イデオロギー批評」に強く関心を持っていることが分かったので、次はこの本を読んで更に批評に対して理解を深めたい。

批評理論を学ぶ人のために - 世界思想社