【雑記】稲作農家は赤字経営のところが多いのは本当か?
まとめ
- 前に雑談で稲作農家は赤字経営のところが多いという話をされて、感覚的には違和感を感じなかったが、数字として証拠はあるのかなと思いざっと調べてみた。
- 令和3年度の60kg当たり全算入生産費と米の相対取引価格の値を見ると、作付面積が10 ha未満の農家は赤字となる。農業センサスによると、10 ha以上の作付面積がある経営体は全体の3%。よって、ランダムに経営体にヒアリングしたとすると、赤字と答える経営体の方が多いことが推測される。
- 作付面積を大きくし農地を整備すると、稲作の現状とその課題についてのコスト削減事例にあるようなことが実現できる。しかし、春作業(育苗、耕起・整地及び田植)が規模拡大を阻害している。
- 米生産コストをめぐる現状と対応方向によると、全体労働に占める割合は春作業に行う作業で耕起(13.3%)、育苗(19.2%)、田植(14.9%)が高い。一方、防除は1.8%、追肥は0.7%と秋作業で行う中間作業は低い値にある。
見つけることのできた農水省の資料
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- 令和3年度の60kg当たり全算入生産費は平均14,758円。個別経営の1経営体当たりの作付け面積は平均181.0 a。
作付規模別の全算入生産費も記載されている。
作付規模 60kg当たりの全算入生産費(円) 0.5ha未満 26,903 0.5ha ~ 1.0ha 21,353 1.0ha ~ 3.0ha 16,289 3.0ha ~ 5.0ha 13,080 5.0ha ~ 10.0ha 12,161 10.0ha ~ 15.0ha 11,188 15.0ha ~ 20.0ha 10,244 20.0ha ~ 30.0ha 10,786 30.0ha ~ 50.0ha 10.277 50.0ha ~ 9,040 全国平均 14,758
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- 令和3年度の60kg当たり全算入生産費は平均11,293円。個別経営の1経営体当たりの作付け面積は平均2319.4 a。
- (コメント)個別経営の稲作農家に比べて、3,000円ほど生産費が安い。
- 過去に公表した米の相対取引価格・数量
- 稲作の現状とその課題について
- 3枚目のスライドを見ると、5.0 ha(= 500 a)以上の作付け面積がある経営対数は7%(経営体の総数は713,792件)。
- ※資料では農業センサスの令和2年度の統計値を引用している。
- 9枚目のスライドに米の生産コストの推移のグラフがある。
- 生産費の中で労働費の割合が14,758円中、3,860円を占めており、比率の中では一番高い。
- 春に行う作業(育苗、耕起・整地及び田植)が、労働費の中で割合が高い項目。
- (コメント)個別経営の稲作農家に比べて、3,000円ほど生産費が安いのはスケールメリットのおかげ(10枚目のスライド)
作付規模の拡大に伴い、自ら作業を行うことによる賃借料及び料金の減少、機械1台当たりの稼働面積の増加による農機具費の減少、作業効率の向上による労働時間の短縮等により、生産費は大幅に縮減している。
- 3枚目のスライドを見ると、5.0 ha(= 500 a)以上の作付け面積がある経営対数は7%(経営体の総数は713,792件)。
- 米生産コストをめぐる現状と対応方向
- スライド19枚目・20枚目を見ると、全体労働に占める割合は春作業に行う作業で耕起(13.3%)、育苗(19.2%)、田植(14.9%)が高い。一方、防除は1.8%、追肥は0.7%と秋作業で行う中間作業は低い値にある。
- (コメント)数字だけ見ると、労働時間に占める割合で防除や施肥は低いが、作業が夏場になることなどから体力的また環境的に厳しいなど労働環境の問題はあるのか気になるポイント。
- (コメント)平成25年の資料なので情報が古い可能性あり。
その他
- 農業の「働き⽅改⾰」主要品⽬ごとの課題と経営者の取組
- 主要露地野菜及び水稲の作業別部門労働時間(人・10a当たり)を見ると、稲作は14.9時間、露地栽培白ネギは154.0時間